多摩美 合同基礎演習
課題の展示に記載されていた文言。担当の菅さんによるもの
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多摩美術大学大学院デザイン専攻統合デザイン研究領域にて行われている 「合同基礎演習」は、大学院1年生を対象にさまざまなデザイン領域の考え方や技術の習得を目的とした課題制作型の演習である。 今回担当教員である私たち (菅・荒牧)は「装置の機構を応用して新しい玩具を生み出す」という課題を出題した。 この課題は、以下のようなステップを踏んで進められた。
①まず、何らかの装置や道具の機構を調べ、その機構の中から「自分の感性で」 魅力的だと感じるものを探る
②次に、その機構を一回自分でモデル化して再現、機構について理解を深めて魅力の根源を探っていく ③ モデル化した機構を応用することで、何らかの喜びや驚きをもった玩具として具体化する
ここで重要なのは 「装置の機構を応用する」という部分である。 そもそも、私たちはどのようにしてこの世界に新しいものを具体化できるのだろうか。 偶然アイデアが降ってくるのを待つといったような曖昧で不安定なことに縛られるのではなく、意図的に全く新しいものを生み出す 「型」 があるのではないか。
そのような考えから今回の課題のプロセスは設計されている。 最終的に展示されている作品の質も確かに重要だが、私にとっては、この制作プロセスにこそ本当の価値があると思っている。 手を動かしながら探ることによって、はじめてアイデアを発見することができるこの手法は、具体を扱うことに長けている私たちデザイナーだからこそできる思考方法であり、実際に触ることで当初は思いもよらなかった新しい気づきを引き起こすことができるのだ。
現在の社会は、効率的であったり、「売れる」 「映える」「バズる」などといった情報的なインパクトがあることをとにかく求められがちである。 しかし、高いレベルでの新しさを目指す大学院だからこそ、そのような些事にとらわれず、本質に根差した探求を行うための力を鍛えるべきだと考えている。今回の演習及び展示が、 そのための一歩になることを大きく期待したい。
菅俊一 (多摩美術大学統合デザイン学科准教授)
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